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いつもと同じ朝のはずだった… 7時15分に起床しシャワーを浴びる。雲一つ無いすがすがしい朝だ。 タオルで頭を拭きながらおもむろにテレビのスイッチをオンにする。 いつもと違う日はここから始まった… テレビではこの時間は昨日のスポーツ情報やのんきな視聴者のリポート等をやっている時間帯のはず。 しかしテレビでは緊急ニュースとして緊迫した表情でアナウンサーが原稿を読み上げていた。 「昨夜未明から今朝にかけて全国のあらゆる場所で一斉に暴動がおこっている模様です。 暴動は各地繁華街から住宅地にまで及び多数の死傷者も出ている模様です。 ただ今取材班が総力をあげ情報を収集しておりますので視聴者の皆さんは安全が確認されるまで自宅で待機されるようお願い致します。 繰り返します…」 …何なんだ?暴動?全国各地?一斉に?断片的かつ抽象的過ぎる情報に一瞬困惑したが楽天的でポジティブな性格なのでさほどニュースの内容は気にとめなかった。 会社まで通勤時間はバイクで20分。都心のやや外れの1K。家賃は6万。駅から歩いて15分ほどだがバイクか車があればさほど気にはならない。 ここで一人暮らしをはじめて早5年。 人並みの大学を卒業し合コンで知り合った彼女と付き合って3年。 そろそろ結婚の話もちらほら出てきている。 貯金もある程度貯まったので今度のクリスマスあたりにアッといわせる演出で彼女にプロポーズでもしようかなと考えている。 今日は金曜日で彼女と久々のデート、絶対に仕事を早く切り上げて帰ってやる。 そんな意気込みで家のドアをいきよい良く開けた。 いつもの通勤風景がそこにはあるはずだった。 しかし俺が見た光景は普段の景色とは若干違っていた…が、まだその時は気づかなかった… マンションの1階に降りバイクを置いてある駐輪場へと脚を向けた時に街中にあまりにも人がいない事に気づいた。 (おかしいな、普段なら通勤、通学途中のサラリーマンやOL、学生が駅に向かって歩いているはずなのに…今日は誰もいない… まさかみんな暴動とやらを危惧して本当に自宅待機しているんじゃ?…) 「まさかな…」 自分でも無意識に言葉に出てしまった。 まるで不安な自分に楽天的な自分が言い聞かせるように… バイクにまたがりヘルメットを装着しマンションを出る。会社に向かう途中で道がやけに空いている事にまたも不安になる。 そういえばマンションを出てから今日人をみかけない…異常だ…というか異様だ… 平日の出勤時間帯にもかかわらず人がいないなんて!! 初めて不安と焦りが募ってきた。バイクを止め携帯電話を取りだし会社に電話する。 時間は8時10分、早出の人が既に会社にはいるはずである。 でない…と言うか電話が繋がらない…話し中?…嫌な汗が流れてくるのがわかった。 地球上には今自分しかいないのではないか?… 変な妄想まで頭の中を駆け巡る。 そんな時人が20m程先の横道からヨタヨタと歩いて出てきた。 人だ!! 何故か安堵感が一気にこみ上げ思わず「おぉ!…」とため息のような叫び声を出してしまった。 その声に気づいた様に前の人がこちらに振り向く。 ゆっくりとした足取りでこっちへ向かってくる。 何かが変だ…動きに精彩がないというか…のろいというか…しかし顔は俺の方1点だけを見つめて視線をそらさない。 俺もその人の異様な動きから目が離せない…というか動けない…恐怖?…脚がすくんでいる… だんだん近づいてくるとその人の顔色が尋常ではない事に気がついた。 青紫色なのだ… 「人間じゃねぇ…」 またも思わず呟いてしまった、ふと我に返る。 (逃げなければ!!) 携帯をポケットにしまいメットを被りバイクのエンジンをかけてUターンする、たったこれだけの動きが非常に長く感じた。 今日のテレビで言っていた暴動と言うのがさっきの奴なのか?何だったんだ奴は?ドッキリか? とりあえず家に戻りもう1度テレビをつける。どこのチャンネルも暴動の話題で持ちきりだ。 あるチャンネルでコメンテーターの1人がこう言った。 「ゾンビですよ」 ゾンビ…そう!ゾンビだ!!まさしくゾンビだよ奴は!!さっきの奴…青紫色の顔、あのヨタヨタした歩き方。 俺は映画でゾンビを見ていた。知っていた…しかしそれが現実の世界にいるなんて…ポジティブ思考の俺でも考えられなかった。 窓に近づき外の景色を眺めると道には先程のゾンビと思われる男がゆっくりと歩いている。 その先にもう2~3人だろうか?…ヨタヨタと力無くさまよい歩いてる。 そうだ…会社は?彼女は?親は?友達は?…また一気に不安が押し寄せてきた。 携帯電話と家の電話両方使ってかけてみる。しかし繋がらない、電話が使えない… 「何なんだよ畜生!!」 思わず叫んでハッとした。今の声…奴らに聞かれていないだろうか? 窓の外を見るとさっきの男がこっちを見ている…目があった気がした…くそう…見つかった。 ゆっくりとした動きでマンションに入ってくる… だがここは4階、奴らの映画のパターンを見ているとそう簡単には上がって来られないはず…階段には防火扉がついていて閉まっているし。 ゆっくり対策を考えるか…この状況でもまだ楽観的な自分が少し怖かった。 奴らの弱点は頭だ。1人1人の強さは大した事は無い。噛まれなければいいんだ、その前に頭を破壊してしまえば良いんだ。 とりあえず武器となるものを見つけなければならない、俺の家の中で武器になるもの… ハンマー?男の一人暮らし、日曜大工品なんてわるわけがない… バット?俺は高校、大学とサッカーをやっていたのでそんな物も無い… 部屋の隅々を探してあったのは殆ど彼女しか使わない包丁だけだった。 とりあえずここを出よう。篭城しても埒があかない。誰か人のいる場所にいかなければ… ライダースを着込みズボンは2重にはき手袋、ヘルメットをつけたまま家のドアを開ける。 まだゾンビはこの階に到着していないみたいだ。 部屋を出てエレベーターの前で階段を使っていくかエレベーターで降りるか考えた。 階段のドアを開けて声を出しゾンビが上がって来ている間にエレベーターで下りるのがいいだろうと考えた。 意を決してドアを防火扉を開ける。そして「バカヤロウ!!」と叫ぶ筈だった。 開けた瞬間に2人のゾンビがなだれ込んできた。 「2人!?」 計算違いだ…何故2人に増えている? 冷静に考えている場合ではないのだがこんな時に限って冷静に考える。2人の勢いに押され思わず倒れこむ。 この世にいる者とは思えないほどの尋常ではない彼らの表情 口をコレ以上無いくらにこれでもかと広げてマウントポジションから顔を近づけてくる 「をぐりゃぁ!!!」 言葉にならない叫び声を上げて俺は包丁を奴の大きな口の中に刺しこんだ。 (グジュパキクチュ) 今までに体験した事の無い音と感触が伝わってくる…上に乗っていた奴の動きが止まり俺にのしかかってきた。 その瞬間右足に激痛が走る。 「ぐあぁ!!」 食われた!…もう1人に… 1人倒した事によって安心してしまったのかもう一人の存在をすっかり忘れていた。 あまりの激痛に飛び起きた… ん?飛び起きた?俺は寝ていたのか?…なんだったんだ?夢か?… 暫く動きが止まった。 夢…だったのか…はは…そう、夢…全て夢だった。 安心して泣きそうになった。 嫌な夢だった。今でも胸くそ悪い…動機がとまらない…やけにリアルだった。 今日のデートで彼女に話してやろう…きっと怖がるんだろうな… そんな事を思い、いつもの朝にちょっとだけ嬉しく思ってシャワーを浴びる。 風呂から出てテレビをつけるとアナウンサーがニュースを読んでいた。 「昨夜未明から今朝にかけて全国のあらゆる場所で一斉に暴動がおこっている模様です…」 「嘘だろ?」 またも呟いてしまった…
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非常口に近づいた。非常口と書かれたランプが、薄暗いなか緑色の光をともしている。 「ここは大丈夫みたいだね」 ヘッドライトに鈍く照らされたドアノブを見つめた弘が言った。 「確認しよう」 浩二は非常口の前に立ち開閉できるか確かめる。 ゆっくりとドアノブをつかむと捻りながら押した。 非常口は動かなかった。 「閉まっている・・・・・・ここは大丈夫だ」 誰かの吐息が聞こえた。 「次だ」 浩二を先頭に四人は再び歩き出した。 「おっさん」 浩二に声をかけたのは和也だった。 「なんだい?」 「従業員通用口って、そこを通ればダイレクトに店舗内から外部に出られるの?」 「いい質問だ。答えはノー」 「ノーって?」 「裏側にある従業員通用口ってのは、単なる事務所への出入り口なんだよ。だから、 外部に出るには事務所にある従業員用出入り口か商品運搬口に通じる扉を利用 しなきゃいけない」 「え!? じゃあ、あと2箇所あるってこと? さっきと違うじゃん」 「いや、普通は従業員通用口は鍵とかかけないんだけど、ここは防犯の意味から 閉店後鍵をかけるんだ。だから非常口と同じように開閉できなかったら大丈夫なんだよ」 「そんなもんなのか」 「あれ?」 弘だった。 「なんだよ、弘?」 一番後方にいた隆がたずねた。 「いや、なんでもないんだけど・・・・・・」 「言えよ」 「うん。なんかさっき風を感じたんだよね」 弘以外の三人は足を止めた。微動だにしない。 「やっぱ勘違い・・・・・・」 「風が吹いているぞ!」 和也だった。 浩二は大工用ベルトから中型懐中電灯を抜き取ると、スイッチを押すと同時に 前方を照らした。 全開にされた従業員用通用口が照らし出された。 「なんてこった・・・・・・」 四人は背中合わせに固まった。 あたりにゾンビがうじゃうじゃいるように感じられた。 ヘッドライトの光線が小刻みに薄暗い闇を駆け抜ける。 「なにか聞こえるか。歩く音とか。唸り声とか」 浩二が全員に聞いた。 「聞こえない。でもここは一番奥側だから正面出入り口付近の音なんて聞こえないよ」 隆が答えた。 「どうする? おっさん」 和也だった。 「あの奥を確認する」 「マジ?」 「ダッシュで閉めて鍵かければいいじゃん」 「それじゃ状況がわからないよ。従業員が鍵を閉め忘れたのか、それとも・・・・・・」 「それとも?」 「誰かが開けたのか・・・・・従業員が鍵を閉め忘れることって、巡回中に何度かあったから、 今回もそう思いたいんだけど。ああいう風に全開ってのは初めてなんだよ」 四人は全開になった従業員用通用口に向かって進みだした。 浩二が従業員用通用口の正面に立った。 下からゆっくりと中型懐中電灯で照らす。全員が耳に神経を集中していた。 なにかが徘徊するような音はなかったが、風がやけに生ぬるかった。 「突っ込む。誰でもいいから、すぐに左側を見てくれ。商品運搬口への扉があるから。 オレは事務所を確認する・・・・・・準備はいいかい?」 浩二の言葉に三人は頷いた。雰囲気で浩二はそれを感じた。 浩二が走った。三人も走る。 ヘッドライトの光線が目まぐるしく駆け巡る。全員無言だ。 和也は商品運搬口への扉に向かった。入って三メートルくらいの距離だった。 もちろん入ってすぐ左側には誰もいないと確認していた。 素早くドアノブをつかみ開閉できるか試す。 「扉は大丈夫だ!」 和也は扉に背中をあずけ深呼吸した。張り詰めた緊張感を何度も味わっていたため、 安心すると疲労感が全身を襲う。そこにいるかもしれないという恐怖は、少しずつ体力と 知力を低下させていた。 事務所にはスチール机や来客用応接セットなどがあった。OA機器もだ。どこにでも ある事務所を感じさせた。広さは30平方メートルほどだ。 浩二は中型懐中電灯で床や机の間などを調べる。 「あれ見て!」 弘が叫んだ。 窓ガラスの一箇所が破られていた。 月明かりが砕けた窓ガラスを照らしていた。 「ここは1階だから窓ガラスはすべて鉄格子付きになっている。それを破って割って侵入した ということは、人間が入ってきたんだ」 浩二が砕けた窓ガラスを中型懐中電灯で照らしていた。 「それとも・・・・・・人間だったヤツ」 その声に振り返ると和也が疲れた顔をして窓ガラスを見つめていた。 「オレを襲ったのは、ここから入ってきた人だったの?」 弘が言った。 「たぶんな・・・・・・問題は、そいつが一人だったかということだな」 和也は砕けた窓ガラスに近づいていった。 窓ガラス越しに駐車場が見えた。なにかが徘徊していた。 「やれやれ、増えてきてるよ。念のために塞がなきゃね、ここ」 和也は何気なく窓ガラスの下を見た。 一瞬体が硬直した。人が蹲っていた。ヘッドライトに照らされた床に血痕が浮かび上がった。 「誰かいるぞ! ここに!」
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ん、テレビの画面が変わった・・・ 「こちら、警視庁の長官です。今回の暴動の件ですが、専門家の意見を求めたところ、信じられない事ですが、 死亡後、死んでいるにも関わらず、行動する事が出来、人を襲います。襲われると感染する事があり、非常に危険です。 専門家の意見によると、数時間以上すると行動不能になると言う事です。絶対家の外には出ずに自宅待機して下さい。 現在、機動隊が鎮圧に向け、活動中です。繰り返します。一般市民は自宅待機して下さい。外出はしないで下さい」 「ふ・・ん。とっとと自衛隊に出動要請すればいいじゃないか・・・・ま、前例が無いとかそういう事で 先延ばしにされるだろうな・・・・と言う事は・・・・自分の身は自分で守るしかない訳だ。」 時計に目をやるともう10時。遅くなったが、朝食でも取るか。 トーストをトースターに入れ、コーヒーを淹れる。 「ま、ここに入れば、安全だし、無理に脱出する必要もないだろう。食料もあるし、水も風呂に張ってあるから、 最悪の場合でも2週間は籠城出来るだろう。2週間も腐敗しないで行動出来るゾンビなんてあり得ないのだしな・・・」 トーストが焼き上がり、トーストにバターを塗り、コーヒーを飲みながら朝食を取る。 朝食後、食料を取り出す。 「冷蔵庫内の野菜、肉類とカップ麺1箱と6個、水、約200リットル、米約15Kgか・・・うまくやりくりすれば1ヶ月は生き延びれるな・・・」 ベランダに出、周辺の様子を伺う。 気持ち悪いぐらい静かだ。道路上に約50人が倒れている。きっと一般市民に反撃されたゾンビだろう。 頭がないものや胴体が千切れてるのも見受けられる。 生きている人影が1つも見あたらない。まるでゴーストタウンの様だ。 生きてる人もやはり、立てこもる方が賢明だと判断したのだろう。 ん、歩いてる人がいる・・・が、ゾンビの様だ。歩行速度がかなり遅く、見ている方がイライラする程だ。 ま、あと数時間もすれば彼は動けなくなっている事だろう。 新しい被害者がこれ以上増えなければ良いが・・・・ 「これでしばらくは彼らの検死や身元確認とかで忙殺されそうだな・・・」 俺はゆっくりとベランダから下界を見下ろしつつタバコに火をつけた。 ----終わり----
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屋内戦の基本を実行し、最上層部まで退却を繰り返して来た我々だが、 万事窮した。生存者は源隊員と剛田、私の3人だけとなり、弾薬ももう 残り少ない。背後には「倉庫A」と書かれた扉。おそらく出口はないだろう。 しかし、もう後戻りは出来ない。私達は扉を開けた。 湿気とカビのにおいが充満した室内。(ここで死ぬのか・・・)そう思いながら 電気のスイッチをつけると室内の様子が照らし出された。 「広い!」倉庫A内は意外な広さだった。梯子階段を伝って屋上に出れる様にも なっている。「これなら勝機があるかもしれないぜ!なあ、野比!」剛田が 叫ぶ。その時、山積みになった段ボールの方から物音がした。「誰だ!」 我々はとっさに銃を向けた。「待ってくれ・・・。撃たないでくれ。ボクだ・・・。」 声の主が段ボールの陰から出てきた。「出来杉!!」そう、奴らに襲われ、 すでに死亡したと思っていた出来杉隊員だった。「出来杉さん!」源隊員が駆け寄る。 私は舌打ちをして怒鳴った。「待て!源隊員!!すでにゾンビ化が始まってるかも しれない!近づくな。」私の声で源隊員は立ち止まった。出来杉隊員はよろめきながら 近づいて来た。「大丈夫さ・・・、これを見てくれ」そう言うと出来杉隊員は髪の毛を すっぽりと脱いだ。カツラ!彼の剃られた頭には大きな手術痕があった。 「・・・!それは!」出来杉隊員は笑みを浮かべながら、自分の頭を指差し、 「りゅ、龍頭・・さ」とうめいた。「お前どうしたんだよ!その頭!」剛田が 恐怖にかられた様子で叫んだ。「もう、心配ないんだ。何も。奴らに怯えて 暮らす必要もない。ボクに恐怖はもうない。」意味不明な言葉を続ける出来杉 に私は銃口を向けた。「もういい、うんざりだ」 すでにゾンビ化が始まった出来杉隊員を撃ち殺した。 ただそれだけの事。私は責める剛田と源隊員にそう言い聞かせた。 出来杉隊員の頭が吹き飛んだ死体を扉の外に出してしまうと私は扉に カギをかけた。剛田が詰め寄る。「やっぱり納得いかねえぞ野比! お前、頭が少しおかしくなったんじゃないのか」本当にうんざりだった。 私はこの最後の砦を自分の自由にしたかった。「うるさいぞデブ」 「何だとー!のび太のくせに生意気なー!」喧嘩が始まった。もうどうでも 良かった。私は剛田を殺すつもりで殴り合った。「やめてー!二人とも! せっかく生き残ったのに、何で争うのよー!」叫ぶ源隊員。「バカだわ! バカどもだわ! 腕っぷしは昔と変わらず剛田の方が強い。たちまちに私はボコボコにされた。 「はあはあ、いいか野比!これからはオレに従ってもらうからな!オレたちは お前の奴隷じゃないっつーの!」そう言って剛田が向こうを向いた瞬間、私は すかさず彼の頭を撃ち抜いた。「キャー!!」源隊員は気を失ない倒れた。 やっと二人きりになれた。私は気絶した源隊員を全裸にするとベルトで縛り上げた。 数分後に目覚めた源隊員は悲鳴を上げた。「な!何をするつもり!」 あとはやることをやっただけだ。案の定、彼女は処女ではなかった。出来杉のやつと 何度も関係を持ったのだと口を割らせてから射殺してやった。あまりにも悔しかった 為、殺した後、何度も姦した。アナルと口にも射精し、その日は眠りについた。 翌朝、屋上に出た私は呪いの言葉を吐きつつ、地上を徘徊するゾンビ共の上めがけて 落下した。
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前書き 一発だけ行きます。ちょっとギャグ気味かも。 安全確認後、尚也はスポーツジムへと車を向けた。 元は自分の体力維持をかねた拠点にするつもりだったが、その後でモデルハウスを見つけたために生活環境は整えていない。それでもこんなときには持ってつけの場所だった。 「基礎体力、筋力ともに問題ないな。何か運動をやっていたのか?」 尚也は一通りテストを終えたところで、クールダウンをしている日向に声をかけた。 「水泳と弓道をやってました。うっ、……あ、あん」 額に珠のような汗を浮かばせた日向は、軽く息をはきながら開脚前屈をする。 両足はほぼ180度まで広がっていて、さらに倒した体が無理なく床についている。 「おまけに柔軟も問題なしか。怪我はしなくてすみそうだな」 開脚側屈を始めた日向を見て、尚也は感心したように言った。 「しかし水泳と弓道か。ずいぶんと方向性の違う組み合わせだな」 尚也は壁際にウレタンマットを並べ始める。射撃訓練の的にするつもりなのだろう。 「うーん、普通そう思いますよね。実はそれなりに関係あるんですけど」 日向も柔軟を終わりにして、マットを並べるのを手伝う。 「よし、これで良いだろう。よく分からないな。水泳と弓道にどんな関係があるのか」 尚也は日向にタオルを渡しながら小首をかしげる。 日向は額の汗を拭うが、紅潮した体からは汗が流れ続ける。 「汗がすごいぞ。熱があるならすぐ言ってくれ。無理はして欲しくない」 スポーツドリンクを渡して、日向の様子を窺う。ちなみにドリンクは備え付けの自動販売機から無料で手に入れたものだ。 「大丈夫です。この汗は病気とかじゃなくて。えっと、なんと言うか、イヤー照れるッス」 意味不明の言葉を返しながら、尚也が渡したタオルに顔をうずめる。 「?無理をしていないなら良い。次は銃の訓練だから落ち着かないと危険だぞ」 後書き というわけで、ようやく銃火器の訓練に移ります。 銃の使い方云々というより、心構えや覚悟を中心において訓練を行なうと思います。 で、おまけの没バージョン。 「水泳と弓道をやってました。うっ、……あ、あん」 額に珠のような汗を浮かばせた日向は、軽く息をはきながら開脚前屈をする。 両足はほぼ180度まで広がっていて、さらに倒した体が無理なく床についている。 「それよりも聞きたいんだが、何でスクール水着と体操着の上なんだ?」 「スポーツジムと言ったらレオタードですよね。一応代用品のつもりなんですけど。ブルマのほうがよかったかなぁ」 「汗がすごいぞ。熱があるならすぐ言ってくれ。無理はして欲しくない」 スポーツドリンクを渡して、日向の様子を窺う。ちなみにドリンクは備え付けの自動販売機から無料で手に入れたものだ。 「大丈夫です。この汗は病気とかじゃなくて。えっと、なんと言うか、イヤー照れるッス」 意味不明の言葉を返しながら、尚也が渡したタオルに顔をうずめる。 「あっ、水泳と弓道の関係知りたいですよね!笑わないって約束してくれるなら教えてあげます。実はですね、水泳は胸筋を鍛えますよね。で、弓道も上半身を使いますよね。 胸筋を鍛えるということはAがBに、BがCになるということで、垂れるのを防いで姿勢も良くなる効果があるんです。揉んでも膨らむだけで大きくはならないんです」 拳を握り締めながら力説した後、「ナイショデスヨ」と背伸びして尚也の耳元に囁く。 「でも形とか感度のほうが重要だと思うんです。( ゚д゚)ハッ!尚也さん手に余るぐらいの方が好きなんですか!」 ……駄目だ。つい日向をギャグキャラにしてしまう。これも尚也が冗談のひとつも言ってくれないからだ。
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東北道を北上し始めてどれくらいの時間が過ぎただろう・・・。 弥生は助手席で寝息を立てている。カーナビをつけているが、 依然、起動画面のまま動かない。あとどれくらいで青森県内に入るのだろうか。 前にも後ろにも車の姿はない。仙台を過ぎたあたりからだったろうか、 こんなに人気がなくなったのは・・・。一体これからどうなるのだろう。 東京を出る時、もう死ぬんだと思った。でも、私達まだ生きてる。 北の方へ行けばあの奇病からも逃げられるかと思ったけど、 この静けさは何?人の気配が全くない。みんな考える事は一緒で 北上する人間で溢れているハズだと思ったのに・・・。 「・・・・まどか、ここどこ?」 突然、弥生が声をかけてきたので驚いた。起きたのか。 「わかんない。でももうじき青森に入る頃だと思うよ。」 「車、一台もいないね・・・」 「うん・・・・・」 弥生はこれ以上ないくらい不安そうな表情だ。顔色も悪い。 無理もない。彼女みたいな典型的な箱入り娘があんな異常な状況に 置かれ、あてもないこんな見知らぬ土地まで連れて来られているのだ。 心細い事だろう。しかも道連れが私一人。 なんとか頼りになる人間を見つけないと。男勝りと(不本意ながらも) 言われる私が一緒とはいえ、やはり女二人では危険だ。 これから先、どんな無法地帯が私達を待ち受けているか予想もできない。 せめて武器。武器が必要だ。 東京は酷いものだった。あの正体不明のバケモノ達以上に私は人間が 恐ろしかった。目を覆いたくなる略奪行為・・・。あそこまで変われてしまう ものなんだな、とつくづく思い知らされた。 「まどか、お腹空いたね」 「うん、確かまだオレンジジュースが残ってたと思うけど・・・」 弥生が助手席から後部座席に身を乗り出してゴソゴソやり始めた。 足をバタバタさせて、まるで子供のようだ。少し笑ってしまった。 暗くなってきた。夜が来る。 空が暗くなるにつれ、前方(青森方向?)がぼんやりと光っている様に 見えた。
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彼は後ろ手に縛られ、地下室に転がされていた。 突然電灯がともる。意識を取り戻していた彼は、その眩しさに目を細めた。 「こんなところに連れ込んで、一体どうするつもりだ」 彼は叫ぶ。室内に入ってきた者は薄気味悪く笑うのみ。 彼女――謎の者は顔面を覆っていたマスクを外した。彼は息を飲む。 「さ、里中さん――あなた――!」 里中と呼ばれた女性は腐敗して崩れた口元を歪め、寂しげに微笑んだ。剥き出しになった歯が白い。彼は状況が把握出来ず、焦ったまま言葉を続けた。 「――里中さん、花粉症じゃなかったんですね」 「そうなんです。花粉症じゃないんです」 女性はそう答えると、鋏を取り出した。彼は再び息を飲む。 「里中さん、まさかそれを俺の眼球に突き立てようというんじゃ……」 「そんなことはしません。私はあなたを縛っている紐を切ります」 「うっ、切ってからもっと恐ろしい事をしようというんだな」 「そんなことはしません。私はあなたを自由にしてあげようと思っています」 「わ、わかった。一度逃がしてから狩りを楽しむように追いかけてくるんだな」 「そんなことしねぇっていってんだろ!」 顔の崩れたグロテスクな女性は怒鳴った。 再び冷静になった女性は淡々と言う。 「実は私、先週死んでしまったんです。でも死にきれずにゾンビになっていたんです」 「そうなのか。ゾンビって初めて見たよ。それにしても臭いな」 「文献で調べたら、他の人間の一部を食べる事が出来ればその人に成り替われるというのです。どうせなら愛している貴方と一緒に成りたくて……」 「うわぁ、ゾンビに告白されたの生まれて初めてだぁ」 「でも、やっぱりどうしても出来なくて」 「くぅ、臭ぇなぁ。鼻が曲がりそうだぜ。そうだ、そのマスク貸せよ」 「ちったぁ真面目に聞けよ!」女性は怒鳴った。 「ん、話はわかった。これから君が入れ替わる人間を俺が探してくるよ。しばらく時間をくれ。また戻ってくる」 女性は一人残され、寂しげに呟いた。 「あたし、なんてお人好しなのかしら。戻ってくる筈ないのに。──いえ、この場合ゾンビ好しって言うのかしら」 翌々日、倉庫の前に一台の車が止まり、律儀にも彼は戻ってきた。 「待たせたな。車の中に三人程拉致してきたぜ。さぁ、好きなブツを選んでくれ」 「本当に戻ってきてくれたのね」 「礼は要らないよ。それにしても一段と匂いが増したようだな」 彼は一人目を引きづり出した。目隠しされ、身体中縄とガムテープでぐるぐる巻きにされているが、明らかに若い女性であった。縄の食い込み具合から見ても、かなりのグラマーな類に見える。 「こいつはどうだ」 「ちょっと他の方も見てみましょう」 続いて出されてきたのも若い女性であった。髪は長く、突き出た胸は先程以上である。 「も、もう一人も……見てみましょう」 最後の一人が後部座席から引っ張り出されてきた。露になった脚は透き通る程白く、適度に弾力性がありそうである。そしてはだけた胸元には深い谷間が刻まれていた。 「どうだい、いい感じだろう」彼は自慢げにポーズをとって立ち、にやにや笑っている。彼女は歯を飛ばしながら言った。 「みんなてめぇの好みかよっ!」 「え? 気に入らない? そりゃ困ったナ。じゃあこいつで手を打ってくれ。こいつになっても俺は里中さんと一緒に居てやるぜ?」 「まだ連れてきてたの?」 彼はトランクを開いた。彼女と二人で覗き込む。 茶色い縞模様の猫が丸まっていた。 彼女は骨が剥き出しになった肩をすくめる。 「つまり、胸が大きくないくらいなら、猫の方がマシってことね……」 「あははは、こーいうのキラい?」 「ううん」彼女はかぶりを振った。「──結構いいかもね」 「いやぁ、これは軽い冗談なんだけどさ」 彼女は今度笑いながら──皮膚は腐っているが──怒鳴った。 「おまえの冗談はわかりにくいんだよっ!」 彼の表情は不思議と輝いていた。 「俺、ゾンビに告白するのって初めてなんだけど、実は前から里中さんの事好きだったんだよ。そのよく怒鳴る口が腐り落ちる前に返事してくんないかな?」 そして右腕をかじりやすいように口元に差し出す。 「バカね、あなた……。噛み付くと思う? 愛してるのに」 「そう言うだろうと思ったよ。あのさ、里中さんはちゃんと調べてこなかったでしょ? ゾンビに関する伝承は他にもあるのさ。ゾンビである人間を本当に愛する人間が現れたなら、生き返る事が出来るってね。その証拠に口付けをするんだ」 「この──臭い口に──?」 「気にすんなよ。俺も三日も歯磨いてないんだから」 彼は強引に彼女を抱きすくめた。彼女は少し首を引いたが、やがて身を任せる。 彼女の身体から死臭は消えていった。 トランクでは胸の大きな女性三人が昏睡状態のまま転がり、猫が丸くなっている。 石塚公雄は、里中京子を抱き締めながら、ズボンのポケットに潜ませていたエンゲージリングに手をかけた。
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古木に囲まれた神社は早朝の清涼な雰囲気をいまだにとどめていた。 武老人は涼やかな風に一息つくと、境内を見渡して尚也を見つけようとした。 狭い敷地なので、軽く首をめぐらすだけで敷地は見渡せる。 だというのに、どこにも青年の姿は無かった。 裏手かと思い敷地に足を踏み入れた瞬間、獣の低いうなり声が発せられる。 あわてて声のほうを見ると、注連縄の巻かれた御神木の根元に野犬が見えた。 かなり大きい。 四肢に力をみなぎらせ、老人を見据える眼には強い光がある。 武老人は右手をゆっくり銃へと動かそうとしたが、かすかに動かした瞬間、獣が身を軽く沈めたのを見て思いとどまった。 ――厄介じゃな。銃が何なのかを知っておる。相手にするには危険極まりないて。 老人は緊張に汗をにじませながら、獣の様子を観察する。 普段なら相手にする必要も無かったが、尚也がここにいるとメモを残しているからには退くわけにはいかなかった。少なくともここにいないことを確かめなければ帰れない。 ――どうした?いきなり伏せおった。 先ほどまで互いに睨み合っていたのに、獣はいきなり伏せて敵対の意思を消す。 不思議に思い様子をうかがう老人に、獣から聞き覚えのある声がかけられた。 「すまない。心配をかけるつもりは無かった」 見ると野犬のそばに目的の青年が寝そべり、軽く手を上げて挨拶をしている。 ――馬鹿な。先ほどまでは見えんかった。犬に気を取られ過ぎていたということか。 尚也は立ち上がり、老人へと歩み寄る。野犬もおとなしく追従している。 「もう少し早く帰るつもりだったが、寝過ごしてしまったようだ」 青年からは昨夜までの憔悴が嘘のように失せ、しっかりと回復しているように見えた。 「体の調子はよくなったようじゃな。ずいぶんと心配したぞ。――ところでこの犬はどうしたんじゃ。ずいぶんとなつかれておるが」 もっともな問いに、尚也は軽く眉をひそめて答えた。 「俺にもわからない。ただ、何となくだがこいつの考えていることが分かるような気がする。多分、こいつもそうなんだろう」 「旅に出て、色々なものを見てきた。どこに行っても、怖いと思ったことはなかった。何を見ても、恐ろしくなかった。要らないものばかりで、欲しいものは見つからなかった」 尚也は淡々と語り続ける。 「久しぶりに帰ってきたら、君は病に臥せっていた。こうしている今も、君の体は少しずつ冷えていく。怖い。震えが止まらない。お願いだ、目を開けてくれ。もう馬鹿なことは言わない」 周囲に座した人影は、言葉もなく聞き入っている。 「若者が祈り続けると、恋人の体は少しずつ温かくなり、ついにその目を開きました。こうして恐れを知らなかった若者は怖いと思うことを知り、恋人と幸せに暮らしました」 最後の一文を読み終えると、尚也は手元の本を閉じた。それと同時に、周囲に座っていた子供たちが次々に言葉を発し始める。 「ねえ、お兄ちゃんは何が怖い?」 かしましい声を要約するとそうなった。 「怖いものか。そうだな……今は特にない」 その言葉に、子供たちは順々に質問を浴びせてくる。 「本当?ねえ、ゾンビは怖くないの?」 「銃がある。それに相手にしないのが一番だ」 「じゃあ、怪我とか病気は」 「なってから心配しても仕方がない。なる前から怖がるのも無駄だ」 途切れることなく続く質問に、尚也はよどみなく答え続ける。だが、少女の何気ない質問に、初めて言葉が途切れた。 「じゃあね、お話の若者みたいに、好きな人が病気になっちゃったら?」 初めて口ごもる尚也に、子供だけでなく葉月の視線までが集中する。 「……怖かった。でも、それより何も気づかなかった自分に腹が立った。さあお話はここまでだ。昼寝の時間だ。寝なさい、大きくなるには夢が必要だ」 「あんなに素直に寝付いたのは久しぶりです。尚也さん保父の素質がありますよ」 縁側に座り、銃の手入れをする尚也にお茶を入れながら、葉月は感心したように言った。 朝食のあと、葉月に仕事を手伝うように頼まれて同行した尚也だったが、行き先が保育施設と分かるとかなり渋った。 子供を怖がらせるだけだという尚也を葉月は「大丈夫です」と押し切り、犬がいっしょだとまずいだろうとなおも抵抗すると「別に噛む訳じゃないし、イヌのほうがしつけができてるぐらいです」と取り合わなかった。 結局、昨晩放置した原付に給油して走り出した葉月を追うことになった尚也だった。 「それに来るまではあれだけ反対していたのに、バリケードや壊れていた戸も直してくれたし、菜園の手入れもしてくれたじゃないですか。何のかの言って子供好きと見ました」 可笑しそうに笑う葉月の足元では、巨躯の大型犬が寝そべっている。 「食事を出すなら、ここの番をしても良いそうだ」との尚也の言で、彼はここの番犬に就職が決まっている。すでに尚也は簡単な命令を決めて、葉月たちに教えていた。 命令はいつも同じ言葉でしないと混乱するからだと尚也が言ったが、葉月たちから見れば尚也と獣の間には意思のやり取りがあるようにしか見えなかった。 ちなみに犬は園児から「ロボ」との名前をつけられ、壁に名札もかけられている。 ふとロボは立ち上がると、尚也の方へと視線を向けた。 尚也も手入れの終わった銃を腰の後ろのホルスターに入れ、ライフルを持つと立ち上がった。一人と一匹の視線は庭の先、保育施設の入り口の柵へと向けられている。 「おや、尚也さん。暑い中どうしたね」 やってきたのは小柄な老人、鈴木弘明だった。 尚也とロボは再度視線を交わすと、元の姿勢に戻る。 「手伝ってもらってるんです。弘お爺さんの仕事もすませて貰っちゃいました」 「そりゃ、申し訳ない。しかし良いのかね、旅の途中じゃなかったのかね」 縁側に並んで腰をかけながら、弘明老人は訊ねる。尚也たちの様子から危険はないと判断したのか、足元の獣を警戒する様子はない。 「ガソリン代だ。別にただ働きじゃない。ほかに手伝っている人間は何人いる?」 話題を変えるために、話を振る。 「儂の他にはあと四人おる。どっちも農家の年寄り夫婦じゃ。米と野菜に卵は何とかなるといったとこじゃな。たまに武ちゃんが魚を釣ってくるから食うもんはなんとかなっとる」 「街には人と物資は残っていないのか」 尚也は保育所の備蓄を思い浮かべながら聞いた。塩や砂糖といった調味料の類に余裕がないのはともかく、長期的に持つ食料は全くといって良いほど無かった。 「人も物もあるが、どうにもこうにもな。人がいない方が何ぼかましと言ったとこかのう」 「暴徒か」 「まあ愚連隊と言った方が正しい。ああ葉月ちゃん、子供たちと昼寝しときなさい。体力が持たんぞ」 老人の言葉に、葉月は素直に席を離れる。 「何かあったのか」 尚也は老人と葉月の様子から見当をつける。 老人はため息をつき、こぶしを握る。微かに震える手が、内心の激情を物語る。 「さらわれたんじゃよ。ここにはもう二人若い保母がおった。街に食料を取りに行ったきり帰ってきておらん。武ちゃんと儂が取り戻しに行ったときはもう手遅れじゃった」 老人の目から零れ落ちるものがあった。 「不甲斐無い。若いもんが死んで、年寄りが無駄に生きてしまっとる。せめてここの子供たちだけはあんな目にはあわせちゃいかん。そう思って生き恥を晒す事にしとる」 情けない、そう老人は繰り返す。尚也は黙って話を聞くだけだった。 日が落ち、夜の帳が十分に広がった深夜、尚也は高機動車のエンジンを動かす。 車に乗り込む前に、振り返るとロボが見送っているのが見えた。 「もし俺が出かけている間に襲撃があったら、そのときは頼む」 獣は軽く頭を振り、了承の意を伝える。 静かに走り出す車を、ロボと、物陰から弘明老人が見送っていた。 「アレー、おじいちゃん。今日のご飯は多いね。あっプリンもある!どうして?」 子供たちの前にはいつもより多めのおかずと、今まで出たことの無かったプリンが並んでいる。どの子も大喜びではしゃいでいる。 「神様がな、いい子にしていたからご褒美をくれたんじゃないかな。さあ手を洗って来なさい。ご飯にしよう」 「うん。あれお兄ちゃんは?ご飯なのにいないよ」 園児たちが、丸眼鏡のきれいな顔立ちをした青年の姿を探し始めた。 「お兄ちゃんはね、お仕事があるからもう出かけたの」 「エー!何でー。昨日お兄ちゃんと約束したのにー」 子供たちは口々に不満をこぼす。中には泣き出しそうな女の子までいた。 葉月は「はい、先生のお話を聞きましょう」と大きな声で告げ子供たちを静める。 「お兄ちゃんは約束を破ったりしてないわ。ほら、みんなの分玩具を作ってくれてあるわ。それにね、今日いっぱいご飯が食べられるのもプリンが出たのもお兄ちゃんのおかげなの」 葉月は、箱から手作りの笛を取り出すと子供たちに見せた。 扉の修理をしていた尚也のそばに、ひとりの男の子が立っていった。 尚也が腰をかがめて目線を合わせ、べそをかいている男の子に「どうした」と声をかけると、子供は黙って手を差し出した。 手のひらに、一本の古びた笛があった。手にとって見てみると亀裂が入っている。 「こわれたのか」 尚也の言葉に、男の子のべそが深くなる。 尚也は補修に使った材木を手に取り、懐から取り出したナイフを奔らせた。 見る見るうちに材木は形を変え、一本の棒になった。 尚也は棒の側面に穴を穿つと、ナイフの代わりに取り出した鋼芯を棒の中心に突き刺して貫通させる。鋼芯を抜き出した時には、笛が出来上がっていた。 「拭いてみなさい」 木屑を払ってから子供に渡す。 恐る恐る子供が加えて、頬をくぼませると、笛からはきれいな音色が飛び出した。 音で気づいたのだろう。子供たちが近寄ってきた。笛をもらった男の子から話を聞くと、次々に自分たちにもと、手作りの笛をせがみ始めた。 尚也は苦笑して柵の材料から竹を取り出すと、節を抜き雑巾を棒に巻いて水鉄砲を作り、それでその場を切り抜けた。 早朝、帰ってきた尚也を向かえた老人は高機動車に牽引された車の中身を見て目を丸くした。そこには食料品、日用雑貨、子供用の衣服にキャンプ用品の類まであった。 尚也は老人といっしょに荷物を運ぶと、用意した材木を削り始めた。 しばらくして、水鉄砲に笛、竹とんぼ、竹ひごを使った凧を作り終えると尚也は黙って車に向った。 「行ってしまうのかね。もう少し休んでいったらどうかな。子供たちも喜ぶ」 引き止める老人のほうを振り向かず、尚也は返事をする。 「街にいたごみは掃除した。それとさっきの荷物がガソリン代だ。そう伝えておいてくれ」 「分かった。ひとつ聞かせてくれ。ゴミとやらはどうなったんじゃ」 「手足の腱を切って、まとめてワイヤーで縛って街道に吊るしてある。あとは好きにしてくれ。放っておいて欲しければそうする。目障りだというのなら下水にでも流しておこう」 尚也は何の感情も込めない声で淡々と告げる。 「……すまん。どうしてそこまでしてくれるんじゃ。あんたにとって何のかかわりも無いというのに。よければ教えてくれないかね」 「別段理由というほどのことは無い。ただ子供たちには苦しむ理由はない。誰にだって、さらわれて犯された挙句にゾンビの餌になる理由も無い。ただそれだけだ」 尚也は言い終えると車に乗り込み、エンジンをかける。 北へと走り去る姿が見えなくなるまで、老人は見送りその無事を祈っていた。 「さあさあ、お兄ちゃんが持ってきてくれたご飯だ。冷めないうちに食べないと。食べ終わったら、じいちゃんといっしょに作ってもらったオモチャで遊ぼうな」 子供たちはオモチャを眺めると、いつも以上の勢いで朝食を平らげていく。 それを葉月と弘明老人は目を細めて見つめていた。 尚也が去ってから三日後、武老人のスタンドに風変わりな二人連れが訪れた。 「あのー、凶悪犯を追ってるんですが、この顔に見覚えありませんか」 婦警が差し出した写真には尚也が写っていた。 「さて?一体何をしたんですか」武老人はとぼけて答えた。 「美女侮辱罪です。この私の色気を無視して逃げていきました」婦警の鼻息が荒い。 「ああ、気にしないでください。熱でやられてるんです。通報シマスタって言っておけば収まります。助けてもらった礼が言いたいならそういや良いのに」 いっしょにいた若者は心底疲れたように見えた。 「まあ、とにかくここは暑い。奥で話をうかがいましょう」 老人はひとまず話を聞くことにした。少なくともしばらく暇はしなそうだった。 おかしいなー。 初めは尚也がビルに立てこもった一般人を一人ずつしとめていく サバイバルホラーアクション小編のはずだったのに。 こう、後ろからいきなり口をふさいでのどを切り裂くとか、 腎臓にアイスピックを射しておくとか、 椅子に縛り付けられた仲間を助けようと動かした瞬間にブービーとラップ発動とか そんな感じの話だったのに? いつの間にかご隠居爺さん世直し漫遊記になっとる。 まあその分、本編をスプラッタなエログロぐちゃぐちゃにすればいいか。
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廓抜けなどしなければこんな目に会わなかったのか・・・。 いやしかし、この死人(しびと)の群れは果ては江戸まで押し寄せるのではないか。 この宿場だけにこの飢えた亡者達が止まるとはとても思えない。 「玄斎殿、祐天殿、・・・ご覚悟よろしいか?」 左京様が戸に手をかけて、一同に問いかけた。緊張した面持ちだ。 「左京殿、間違いなくそのような隠れ道があると申されるのか?」 玄斎さんは念を押すように尋ねた。 「それは間違いなく」 左京様が言った。 「・・・よし参ろう」 玄斎さんの声を合図に戸が開かれた。外にはおびたたしい数の亡者達が徘徊している。 左京様は私の肩に手をかけてきた。 「菊、離れるでないぞ・・・」 遊郭の追手に捕まりそうになったところを左京様に救われ、道中を共にするように なってからもう半月が過ぎようとしている。左京様はその素性を語ってはくれないが 大きなお役目を担っているらしく、幕府のお役人らしき方々と定期的に密会をされている。 この宿場町にもそのお役目の為に立ち寄られたらしいのだけれど、まさかこんな事になるとは。 「菊、こんな事に巻き込んでしまって、済まぬな・・・」 死人に斬りつけながら左京様がつぶやいた。返り血が飛んで来た。 「いいえ、この菊の命、左京様に捧げたものと思っています。どうぞお気になさらないで ください。」 少しでも左京様のお役に立ちたい。私は後ろから襲ってきた死人に匕首(あいくち)で 斬りつけた。肉が腐っているので、刃はずぶりと、いとも簡単に突き刺さる。液が飛び出し、 鼻をつく厭なニオイが広がる。 「菊、そのような事をしないでも我々に任せればよい!早く走ることだけ考えるのだ」 左京様がもの凄い力で引っ張る。すごい数の死人だ。玄斎さんも祐天様も苦戦している。 左京様の言ってらした隠れ道を目指し、進んでいるわけだが、このままでは囲まれてしまう。 宿場の街並みはもう少しで途切れる。とりあえずあそこまで抜けられれば・・・。 「玄斎殿!!」 左京様の叫び声で玄斎さんの方を見た。 「うがああああああっ」 折れた槍を振り回しながら死人の群れに取り囲まれている。 「今、助太刀に参る!!」 左京様が走りだしたが、玄斎さんはこちらを向いて吼えた。 「助太刀無用!!それよりもこの隙に逃げられよーー!」 次の瞬間、音にならない嗚咽をあげ、死人達の中に玄斎さんは消えた。 「左京殿、あれを!!」 祐天様の指し示す方向、宿場の入り口、を見ると宿場を仕切る黒田屋の一味が鉄砲を 持って立っている。10人はいるだろうか。 「左京、祐天!!生きてここから出さねえぞ!」 黒田屋が叫ぶ。 「やはりお主であったか、この一連の死人騒動の黒幕は!」 左京様が刀の脂を拭いながら言った。一体何の話だろう。 「怨霊退治を生業とする手前らの事、旅の順路を先回りして一騒ぎ起せば のこのこ現れるかと思ってな・・・。」 「黒田屋とは名ばかり、その正体は八百羅刹の手のものであろう。」 黒田屋は不気味な含み笑いをすると死人に食われる玄斎さんの方を指さした。 「どうだい、この死人達は。そこの男もかなりの手練のようだったが そのザマだ。お前らも相当消耗してるんじゃねえか・・・。」 左京様も祐天様も昨夜から戦い通しだ。その疲労は私にも見てとれる。 「本当に目の上の瘤だぜ、手前らはよう・・・。我らが怨敵徳川への復讐をことごとく 邪魔しやがって・・・。でも今日で終いだ。おい、お前ら!」 黒田屋は手下に鉄砲を構えさせた。 「祐天殿、筒封じをっ!」 左京様は私を庇いながら叫んだ。 「承知。」 祐天様は数珠を投げ上げると錫杖を叩きつけた。 「ぬん!!」 砕けた数珠が光を放って飛んでいくのと黒田屋の鉄砲が火を噴くのは ほぼ同時だった。次の瞬間、破裂音が宿場中に木魂した。 左京様の肩越しに黒田屋達の方を見ると、黒田屋の手下達が叫びながら 転げ回っている。鉄砲が暴発したらしい。皆、腕が飛び散っている。 「くっ、この糞坊主!」 一人無傷の様子の黒田屋は背中から異様に湾曲した刀を出した。 「覚悟しろっ」 黒田屋は刀を振り上げこっちに向かってきた。 背後からは暴発音を聞きつけて押し寄せた死人達が迫ってきている。 50~60匹以上はいそうだ。 「祐天殿、黒田屋は私がひきうける。菊を連れてこの宿場から 逃げられよ!」 「うむ」 左京様は近づいてくる祐天様のほうに私を押した。 「い、厭です!私は左京様のお傍にいます!」 左京様は困った顔をされた。こんな顔、初めて見る。 「頼む、菊・・・。私一人であればこの場は切り抜けられる。しかし誰かを 守りながらではちと難しいのだ・・・。」 左京様の邪魔にはなるのは厭だった。私は素直に従った。 「・・・わかりました。でも、きっと!きっと生きてくださいまし!」 「もちろんだ」 左京様はそう言うと黒田屋の方へ駆け出した。 祐天様の法術のおかげで死人の群れの中を抜け、無事に宿場から出ることができた。 そうか、偶然出合っただけかと思っていたが、左京様と祐天様は大きな役目を共に されるお仲間だったのだ。 「祐天様、ありがとうございました。」 「いや、無事で何より。ここまで来れば安全でしょう。さて、私は今一度宿場に 戻り、左京殿に助勢してこなければなりません・・・。ここで待っていて頂けますかな?」 「はい。ご安心ください。・・・左京様をお願いします!」 「分かり申した」 そう言うと祐天様はもの凄い速さで宿場の方向へ走り去った。 祐天様が宿場へ向かわれてからどれくらいの時間が経っただろう。 随分日が傾いてきた。まさか、お二人の身に何かあったのでは・・・。 そう考え始めると居ても立ってもいられなくなり、私は宿場へ戻った。 宿場に着くと、あたりは静まり返っていた。あんなにたくさんいた死人達の気配もない。 一体何があったというのだろう。宿場入口の門には黒田屋一味の死体があった。 皆、首を一突きで殺されている。きっと左京様が留めをさしたのだろう。 「左京様ーーーー!」 返事はなかった。私は黒田屋の屋敷へ向かった。 宿場の中心に建つその屋敷は、主の名の通りの真っ黒な建物で、今は夕闇に不気味な姿を浮かび上がらせている。 屋敷に足を踏み入れると、強い臭気が鼻をついた。思わず吐きそうになる。 これは、骸のニオイ・・・。ひょっとして死人達が潜んでいるのかもしれない。 でも今は恐怖よりも、早く左京様の安否を確認したいという気持ちの方が強かった。 以前この屋敷に来た際、黒田屋がいた大広間の戸を開けた。 大広間には無数の骸が山となっていた。1匹として動いているものはいない。全部首を 撥ね飛ばされている。 そして骸の山の前に左京様がいた。首が半分ちぎれ、片腕はなく、裂けた腹からは臓物が 飛び出ている。 「さ、左京様っ・・・・」 左京様が死んでしまった。そう思って私はその場にヘナヘナと腰を落とした。 しかし、違った。 「菊・・・・、見られてしまったか・・・」 首がちぎれた左京様は私の姿を認めると、悲しそうな顔をしてそう言った。 残った左腕に黒田屋の首をぶら下げている。黒田屋は蛇のような顔になって長い舌を垂らして 死んでいた。背後から祐天様が部屋に入ってきた。 「・・・・左京殿、申し訳ない。隠れ道沿いにお待ち頂く様お願いしたのですが・・・」 私はわけがわからず、ただ左京様と祐天様の顔を交互に見ているだけだった。 「菊・・・・」 「は、はい・・・」 「安心しておくれ、私はあの歩く死人達とは違う・・・いや、化け物には違いは ないが、決してお前を傷つけたりはしない。私はある時を境に死ねぬ身体に なってしまったのだ・・・。」 「死ねぬ身体・・・」 祐天様が床に落ちた右腕を拾い上げ、左京様のところへ持っていった。 切れた部分にそっと宛がうと、ジュルジュルという血を吸い上げるような音とともに 右腕はあっという間に元に戻った。そして首も繋がり、はらわたも元に戻っていた。 隠れ道を歩きながら、私は横を歩く左京様のお顔を見ていた。美しいお顔。 きっと左京様は老いず、死なず、ずっとこのままなのだ。 私が見ているのに気付き、左京様は笑った。 「・・・菊、お前は本当に私が怖くないのか?」 私も笑った。 「当たり前です。左京様が妖怪であろうと何者であろうと関係ありません。」 そうか、と、とても複雑な表情で左京様は笑った。どういうお気持ちなのか、 今の私にはわからない。でもこれから左京様のお傍にいる間に少しずつそのお気持ち、 そしてその過去を知っていきたい。少しでもいいから。 完
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4車線の大通りの歩道を若い女性が歩いていた。 動作はとてもゆっくりとして、左足をやや引きずるようにしながら、ひたすら前にと歩いていた。 金髪と言うよりは茶髪のショートカットは滅茶苦茶に掻き毟られ、左耳にピンク色の可愛いピアスが揺れていた 白いブラウスは半分程がひき毟られ半身には噛み千切られた、無数の歯形があり胸の乳房の跡地には白い肋骨が 見えていた、比較的無事な半身には小さな膨らみがあり、そこに鮮血の極彩色が黒い染みと成っていた。 スカートは履いておらず、剥き出しの下着が残骸となってこびり付くようにぶら下っていた。 元々人生に生きる目的など無かった彼女ではあったが、今では存在理由すら自分では見出す事は無かった。 彼女の記憶は有ったとすれば昨日の午前11時頃で途絶えていた。 家出3日目の高校2年生だった彼女は、その日は前日知り合ったばかりの男性と新宿のラブホテルに居た。 何の目標も無い上に暗い世相を反映して、無気力に全てに反発しての家出だった、何かをするあても無く 気力も無い彼女が10時過ぎに目覚めた時は、既にパトカーのサイレンが響き渡っていた。 何かがおかしい?と感じつつも気だるい時間を過ごしていた時、男が何気なくテレビのスイッチを入れて 事の真相が判明した。 信じられない事態の中で、その中心地にいる恐怖感が全てを支配し急いで身支度をした、最早男になぞ 構っていられる状況ではなかった。 未だに呆然としている男を突き飛ばして、出口に向かう背後から窓の外を覗き絶望的なうめき声を上げる 男の声が聞えたような気がする。 周りの部屋も騒然となり始め、恐慌状態のなか半裸で逃げ出そうとする女性に取り縋る男性の姿も見えた 狭いホールでは既に身支度を整えたカップルがエレベーターを待っていた。 乗りきれるだろうか?一抹の不安が過ぎる中で、エレベーターが到着した、狭いエレベーターに無理やり 押し込める様に乗り込み、階下に着く時間の中で初めて自分が昨夜一緒に過ごした男を見捨てた事実に 気が付いた、軽い懺悔の気持ちを持ちつつ、エレベーターが到着し扉が開いた。 全ては理解の限界を超えていた、最初に悲鳴そして怒号けたたましい騒音の中で全てが行われた。 大勢の人の手で、半ば引きずり出される様にしてホールに出た彼女の最後の言葉は何であっただろうか? 何はともあれ、そんな過去の事とは全く無関係に、そして相変わらず無気力に彼女は歩いていた。 テメェの事しか考えていない、くそやくたいも無いセンコーも恩着せがましく押し付けがましい両親も居ない 明日の事すら考える必要も無い、無政府主義者が陶酔する夢のような完全な自由を彼女は満喫していた、 勿論それを知覚する事は無かったが、、、。 今、歩道を歩いているのも別に理由なんて全く無い、でたければ車道に出たって構わないのだが車道に出る 理由すらない、唯なんとなく生前の習慣みたいなもので歩道を歩いていた、理由なんて知覚する事すらなかった。 そんな彼女がフト足を止めた、遠くで騒がしい何かがある、、、別に認識した訳でも無いのだがここ数時間 何の刺激も無い状態の中で得られた新鮮な刺激に対して、彼女は歩き始めていた。 通りの向こう側に、紺色の人間と緑色の人間が見えた、、、何となく噛付きたい衝動が体を駆け巡った。 同じように数人の仲間?が向かって行く、下半身を失い上半身だけで芋虫の様に体を引きずって行くのも居た。 それらに対して、紺色と緑色はしきりに腕を向けては小さな炎と大きな音を出していた。 その中の紺色が1人こちらを向いた、腕を突き出す手に黒い何かがある、直後に激しい衝撃を受けた・・。 星野良子17歳の詰らない無気力な人生は、そこで初めて終止符を打たれる事になった。 また、紺色の人間-須藤巡査長は付近のゾンビ掃討を対策本部に機械的な声で報告していた。